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観光客は知らない“大分市の温泉” 実は名湯ばかり…なぜ注目されないのか?
大分市
「おんせん県おおいた」のキャッチフレーズで知られる大分県。温泉の源泉数、湧出量ともに日本一で、「温泉と言えば大分県」という認識が広がってきました。しかし、観光客が思い浮かべる温泉地は「別府」や「由布院」で、県庁所在地でもある「大分市」はその陰に隠れがちで、知名度不足は否めません。実は大分市内には源泉数241本、温泉地が32か所あり、名湯が点在する全国屈指の温泉都市なんです。温泉をこよなく愛する筆者が現地取材を通じて、誘客への課題や可能性を探りました。
空港から遠い、温泉以外に何がある?
大分市明野にある「アサヒ温泉」。開業から20年を迎える人気施設で、ビジネスホテルも併設されています。地元住民に親しまれている温泉で、利用者数は年間20万人を超え、県内トップクラスの集客を誇ります。
人気の理由は、広い内湯や露天など8種類のお風呂。これだけ贅沢な施設にサウナもついて、入浴料は大人430円です。東京で同様の施設だと2倍以上の価格設定となるので、驚きの安さと言えます。また、家族湯も9室もあり、プライベートな入浴にも対応できます。圧倒的な集客力を誇るアサヒ温泉ですが、観光客はそれほど多くないそうです。
アサヒ温泉の関係者は「持ち物で観光客かどうかはある程度わかりますが、さほど多いと感じていません。大分市は空港からも遠いし、交通の問題が大きい。どうしても別府・由布院で観光客が足止めされてしまう」と打ち明けます。
一方で、「大分市は大きなスポーツ施設やドームがあるので、車で流入する観光客を期待したいですね。そのためにも大分市に良い温泉がたくさんあることをもっと知ってほしいです」と力を込めます。
南国バリ風の温泉
「まるた屋温泉西方の湯」は、開業から15年となり、去年2月にはリニューアルしました。温泉といえば「和風」な趣の施設が多いですが、西方の湯は「南国のバリ風」。敷地にはヤシの木が植えられ、店内ではバリの音楽が流れています。プチ旅行気分を楽しめるリゾート施設です。
こだわりは、広大な露天風呂。内湯の2倍ほどの広さで、2つの大きな浴槽と、壺湯、水風呂があり、すべて天然温泉です。水風呂も温泉を冷やして使うという徹底ぶり。さらに男性用の露天からは、遠くに別府湾を望むこともできます。また、リクライニングチェアもあるので、サウナのあとはゆっくり“ととのう”体験も可能です。また、家族湯も6部屋用意されており、部屋ごとに雰囲気を変えています。
西方の湯では、観光バスによるツアー客にも対応しているそうですが、それでも観光客は全体の2割ほど。施設の責任者は「外国人はタトゥーをしている人が多いので、現在は大浴場に入れません。タトゥーをOKにするかどうかは、地元の人たちの理解が必要になるので難しい課題です」と悩ませています。また、「観光で来てもらうには温泉以外のコンテンツも重要と思いますが、正直、大分市で何を紹介すべきか私もわかりません」と本音も漏らしていました。
全室オーシャンビューの個室風呂
今回取材する中で、観光客が多く訪れる温泉施設もありました。そのうちの1つ「神崎温泉天海の湯」は大浴場のほか、7つの個室風呂が特に人気の温泉施設で、土日祝は半数が県外客で占めています。韓国人、欧米人も多く、最寄りの西大分駅から長い坂道を登り、20分近くかけて歩いてくる外国人もいるそうです。
特に人気なのが全室オーシャンビューの個室風呂。1週間前から予約可能ですが、早々に埋まってしまうとのこと。施設側は、4年ほど前から外国人も増えたということで、SNSや動画配信サイトを通じて認知度が上がったのではないかと分析しています。
最近では観光客から『近くのおすすめスポットは?』と尋ねられることが多く、施設の責任者は「うみたまご(水族館)と高崎山しか思い浮かびません。家族向けには良いのですが、大人向けのスポットが必要だと感じています。また、『温泉』と『食』をセットと捉えたとき、『食』については何を勧めればいいのか迷います」と話していました。
大分の絶景と一体化
JR大分駅ビルのアミュプラザおおいたにある「CITY SPA てんくう」。地上19階の浴室と20階の露天風呂から海・山・街を一望できます。天気が良い日の日没前後の時間帯。鮮やかな夕焼けから濃い青の空が暗くなり、街の明かりに灯がともる――この景色を温泉に浸かりながら眺めていると、嫌なことはすべて忘れます。
また、去年7月からは毎週金曜日に、タオルを使って熱とアロマの蒸気を客に届けるパフォーマンス「アウフグース」をサウナ室で始めました。てんくうにはタオルを扇ぐ“熱波師”が男女合わせて7人もいて、設備だけでなくコンテンツの充実にも力を入れています。
入浴料金は1800円からで、大分の温泉としては安くありませんが、絶景やアウフグースに癒されるため、年間約15万人が利用しています。最近は、若い男性客やカップルの日帰り利用も伸びているそうです。
施設の責任者は「長期出張のビジネスマンが多いので、休日に過ごす場所の1つとして提案しています。てんくうにはカフェスペースもありますので、お風呂上りにカフェでパソコン作業をしてもらえるような“ワーケーション”という選択肢を知ってもらいたいです」と話しています。
ブーム到来の可能性十分あり
取材を通して浮かび上がった課題や可能性をまとめると――
・別府と由布院から、さらに大分市に移動したくなる工夫が必要
・大分市民自身がお勧めできる観光スポットを紹介できていない
・「温泉」「食」「観光スポット」をセットにした“面”でのアピール不足
・ビジネスをターゲットにした観光コンテンツ
そもそも、大分市の温泉は「別府温泉」や「由布院温泉」のような統一名称がないため、情報発信においてネックとなっています。
大分市が発行している温泉のガイドマップには『大分市の温泉』と表記されていて、ブランド化されていません。大分市観光課の磯村拓海主事は「統一名称は検討したことがない」と明かします。
一方、ビジネスで訪れる人が多いことから、大分市では出張者向け情報発信サービス「WAKUPO」(ワクポ)を展開するほか、1人でも立ち寄れる飲食店の情報を集めた「OITA BIMI・TAS」(オオイタビミタス)という冊子を制作して、魅力的な飲食店を紹介しています。
大分市観光課 磯村拓海主事:
「WAKUPOは臨海部のコンビナート企業などにQRコードを配布しています。出張者を対象にクーポンを発行していて、飲食店で『生ビール1杯サービス』などの特典が受けられる仕組みです。また、OITA BIMI・TASも駅やホテルなどで配布しています。出張で来た方が大分の良さを家族や知り合いに伝えて、プライベートで来てもらえると良いですね」
大分市の温泉は、源泉数・施設数ともに申し分なく、情報発信や観光導線の工夫次第では、インバウンドの取り込みも十分可能だと感じました。とはいえ、喧騒から離れた“穴場の温泉”という立ち位置もいいのかな――なんて考えながら、きょうも筆者は湯につかりながらゆったりと空を仰ぎます。
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